地球温暖化や人口増加といった問題が世界レベルで山積する今日において、食生産は今まさに転換期を迎えています。2023年7月に国連世界食糧計画(World Food Program: WFP)から出されたレポートでは、2019年に6億1300万人であった飢餓人口は、この4年間で1億2200万人増加し、7億3500万人に達していると報告されています。一方で、国連食糧農業機関(The Food and Agriculture Organization of the United Nations: FAO)からは、世界で生産される食料年間約40億トンの内の約13億トン(全体の約1/3)が廃棄されていることが報告され、それらが処理される際に発生するCO2排出量は、全体の8-10%を占めると推定されています。これらの食糧に関わる問題は、農畜水産業だけでなく環境や人々の健康にも多大なる影響を与えており、それを解決するための「食科学」に関する科学技術の革新は極めて重要です。中でも、食の安定供給を永続的に可能にするための学術基盤を構築することは、農学領域における最重要課題と言っても過言でなく、そのための学際的視点からの教育・研究の進展が必要とされています。